(64)競馬予想は運で決まる

2010年の1月17日に京成杯(GV)と日経新春杯(GU)のレースが行われた。
結果は、京成杯が1番人気、3番人気で決着して670円、日経新春杯が2番人気、1番人気で決着して630円だった。
この結果を見ると競馬はやはり予想が可能なギャンブルであると感じる人は多いのではないかと思う。
競馬の馬券を年に数回しか買わない人や競馬をやり始めたばかりの人は特にそう考えるだろうと思う。
どちらのレースも競馬新聞や競馬評論家の通りに買っていれば、馬連なら5〜6点を買えば必ず的中できたレースだったと思う。

私もこのレースは予想が容易だったし、どちらのレースも3点の購入で的中させる事ができた。
しかし、私は的中できたのは単に運が良かっただけであると考えている。
競馬が力のある競走能力の高い馬が勝つ確率は高いのだが、強い馬が必ず勝つとは限らない。
強い馬同士でレースが決着する割合は、大目に見ても3〜4割程度がやっとだろうと思う。
10回同じレースを行っても、6回程度は外れるのだから、これが外れなかったのは運が良かったとしか言いようがない。

京成杯をフジテレビの競馬中継で見ていたが、さすがに予想が容易なレースだっただけに、細江純子、井崎周五郎、松本ヒロシの3名共に的中していた。
当日の馬場状態や人気馬の枠順、騎手のレベルを考慮すれば4頭もピックアップしてBOXで買えば、7〜8割程度は的中出来そうなレースだったし、実際にも上位人気の4頭はその着順になった。
ただ、上記の3人の予想内容に関して言えば、井崎周五郎の予想は1点買いでしかも馬単の予想だったので、私から見れば大変危険な予想方法であると感じた。
今回は運良く的中できたが、競馬は1点買いで的中出来る程甘くは無い。
井崎周五郎に関して言えば、日頃の予想内容を見ていると、この人は競馬評論家と言っても受けを狙うお笑い芸人だろうと思っている。
1点買いがやたら多いのと受け狙いとしか思えないような穴馬志向の予想が多いからである。
当然ながら、予想結果は外れる場合の方が圧倒的に多い。

私は競馬予想を真面目に考えている人にとっては、井崎周五郎の予想方法は余りにもふざけ過ぎていると思っている。
金の有り余っている人なら、そんな買い方も出来るのだろうが、私のような貧乏人はこんな買い方では競馬資金が続かない。
競馬を長く続けたいと思っている人にとっては邪道であり、悪影響を与える行為だと思っているのだが、中には彼を競馬評論家として信奉している人は私の身近にも居るので批判するのはこのぐらいにする。
単に世の中に面白い人間が一人や二人いても良いだろうと思っているだけの人も居るだろうが、競馬評論家の看板をそこまで軽いものにすべきでは無いだろうと思っている。
職業意識に燃えて、真面目に競馬予想をしているトラックマンも少なくは無い。
こんな人達に対して恥ずかしい行為だろうと思うのだが、本人はどこ吹く風のようである。

私が馬券予想は運であると感じるのは、順当そのものに思えた日経新春杯で信じられない事が起こっているからである。
京都で行われたこのレースは、確かに1,2着は順当そのものだったのだが、3着に12番人気(最低人気)のHレーッドアゲートが入っている事である。
この馬は1,2着馬に比較すれば遥かにレベルが低い事は確かで12番人気が妥当かどうかは兎も角としても、実力は平均以下であるのは間違いが無いと思う。
なぜこの馬が、3番人気のCサンライズマックス(4着)や7着のFベストメンバー(4番人気)に勝てたのだろうか。
レース映像をじっくり見るとその理由が何となく理解できるように思える。

日経新春杯のペースは2400メートルにしては明らかにハイペースだった。
逃げたDドリームフライトの1000mの通過が58.9秒であるから、仮にどんなに力のある馬だったとしても潰れる可能性は高い。
これほどのハイペースで逃げたのは、酒井騎手のレベルが低いためだったのか、コントロールの出来ない馬だったのかは不明だが、むちゃくちゃなペースになったおかげで追い込み馬にはかなり有利な展開となった。
1番人気のGトッピカミングや2番人気のKメイショーベルーガにしてみれば、Dドリームフライトの酒井騎手には感謝状をあげたいぐらで、同厩舎なら連携プレーと言われそうなレース展開だった。
好位置につけていた4番人気のFベストメンバーはこのペースに巻き込まれて足を失ってしまった。
この馬は休養明けだったのも影響したかも知れない。
1番人気の蛯名騎手のGトップカミングも最初は後方を走っていたのだが、先頭馬から放され過ぎたのであせったのか3,4コーナーでピッチを上げすぎて結局はゴールの直線途中で足をなくしてしまった。
1番人気を背負っている重圧からだったのか、あせり過ぎたのだろうと見受けられた。
結局はワンパターンの騎乗しか出来ない池添騎手のKメイショウベルーガがGトップカミングを直線で3馬身も引き離して勝つレースになったのである。

1,2番人気の馬の力が抜けていたので波乱にはならなかったのだが、展開次第ではAマンハッタンスカイやFベストメンバーにもチャンスはあっただろうと思う。
問題の3着になった12番人気のHレッドアゲートであるが、レース映像を見ていると常に最内を走りながらハイペースに巻き込まれずに一定のリズムで走っているのが判る。
この馬の直ぐ後ろに3番人気の武豊騎手のCサンライズマックスが走っていたのだが、全く同様のリズムで走っていた。
力の不足していると思われる馬に騎乗している場合は、これが最良の騎乗なのである。
武豊騎手がこのような騎乗をするのは当然としても、まだ21歳の浜中騎手にこのような騎乗ができるとは思わなかった。
つまり、周りの雰囲気に一切惑わされる事がなくHレッドアゲートにとって最良の乗り方をしているのである。
完璧な乗り方をしたお陰で、直線に入ってからの武豊騎手のCサンライズマックスでも差を詰める事ができなかった。

Hレッドアゲートが3着になれたのは、この馬が転厩初戦でもあり調教も十分行われていたのだろう。
レースもハイペースになって有力馬も数頭が潰れてくれた。
ハンデ戦で斤量も52Kだったのもこの馬には幸いしただろう。
そして何よりも浜中騎手はこの馬に合わせて最高の騎乗を行った。
今回の3着は決してまぐれではなかっただろうが、これほど恵まれた状況になることは今後は2度とは無いかも知れない。
やはり、競馬予想は運の要素で決まると言わなければならないだろう。
Hレッドアゲートがこれからも活躍できるかどうかは疑問に思っているのだが、浜中俊騎手はこれからも間違いなく活躍を続けるだろう。
騎手にとって大事なのは、どんな馬に騎乗していても決して勝負をあきらめない事である。
展開にも恵まれはしたが、見事な騎乗振りだった。
年齢はまだまだ若いが、彼が一流騎手へ仲間入りが出来る日は遠くないのではないだろうか。
そんな感じを抱かせる日経新春杯だった。

【後記】
レッドアゲートはその後11回レースに参加しましたが1度も5着以内に入る事はなく登録を抹消しました。
浜中俊騎手が、現在も活躍しているのはご承知の通りです。