(1)はじめに

競馬は衰退の一途をたどっている。
特に地方競馬の惨状は目も当てられない状況で、いずれは地方競馬と呼ばれるものは消滅するだろう。
中央競馬も、人気の低迷は避けられず売り上げの減少傾向が続いている。
なぜなのかと言えば、多くの人達の収入が減少して娯楽としての競馬を楽しむ余裕が無くなった事であろう。
更には比較的に懐の暖かい若年層は、競馬には興味を示さない事も挙げられるだろう。
若い人は現実的な物の見方をする人が多いので、理解に手間のかかる事や実体のはっきりしない物には近よらないのかも知れない。

中央競馬が地方競馬のようにこのまま自然消滅するのかどうかは私には判らない。
ただ、競馬は宝くじのような単なるギャンブルとは異なる側面を持っている。
世界的な規模でレースが行われている事も見逃す事はできないだろう。
しかも、競馬は金持ちの社交場(暇つぶしの場)的な意味合いを持つ事も忘れてはならないだろう。
1着になった競走馬のオーナー等が競走馬や騎手と記念写真を撮っている光景がまさにそれを物語っていると思う。
所詮は、競馬と言うものは金持ちの道楽の1つに過ぎないのだろう。
一般庶民が競馬を楽しむ事はできなくなる可能性はあるが、金持ちが居る限り競馬そのものが無くなる事は無いだろう。

インターネットで競馬に関して検索してみると、数え切れない程の情報を得る事ができる。
多くのサイトは、競馬予想の売り込みであり、競馬で大儲けをしたいと思う人達の射幸心を煽(あお)っている。
競馬予想本のPRや競馬予想ソフトのPRも結構多いし、何とか指数用のデータの販売を行っているサイトも多いようである。
多くに共通しているのは、これで万馬券を何本的中したとかを大々的にアピールしている点である。
お金を出さないと予想が判らないので、果たして本当なのかどうかの確認はできないのだが、よくよく見てみると本命予想とか伏兵予想、はたまた穴馬予想と称して各10点も予想している場合がある。
確かに毎回30点以上も購入していれば、万馬券が当たる事もあるだろうが、その前に資金が続かなくなると言うものである。

私は競馬はある意味で、かなり立ちの悪いギャンブルではないかと思っている。
一つには、多くのテレビ局が取り上げて競馬が高尚な趣味でもあるかのような位置付けにしている事である。
競馬は純然たるギャンブルであり、決して頭のスポーツ等と呼ばれるような推理ゲームとは異なるものである。
もし推理ゲームであるならば、正確な推理を行えば的中できなければならないが、競馬(レース)は推理小説のような必然的な要素で決まるものではなく、ほとんどのレースが数多くの偶然が積み重なって決まるものである。
競馬関係者の中には、競馬を推理ゲームのごとく表現している人達もいるが、あらゆる偶然性を想定する事等は出来る筈も無く、競馬を推理ゲームとして宣伝する事でJRAに媚びりたいと思っているだけであろう。

さらに不幸な事には、競馬の予想はかなりの確率(30%前後)で的中する事である。
それを幸いに、競馬評論家と称する人達も存在できるし、競馬予想紙等も事業として堂々と発行されている。
長年競馬を趣味としている人なら判る事であるが、誰もが予想の可能なレースをいくら的中できてもほとんど利益を上げる事はできない。
更にもう少し的中率を上げれば安定して儲ける事ができるのではないかと思っている内に、どんどんと泥沼の中に入り込んでいくのである。
確実に儲かっているのは胴元だけで、馬券の購入で利益をあげている人の割合は5%前後であろうと言うのは確かな事のようである。
この数字は、大多数の人が競馬で安定して儲け続ける事が不可能に近い事を表している。
儲けるどころか競馬を娯楽として位置づける事さえも困難になりつつある。

ところで競馬の予想を商売としている人の中で、年間の予想内容と的中結果や収支結果を堂々と発表できる人がどの程度居るのだろうか。
ほとんどの人が存在価値の無い情報や、いい加減な情報を撒き散らかしていると言わざるを得ないのではないだろうか。
競馬予想とはそんなものだろうと言われればそれまでの話であるが、私はその事に気付くまでに何年も費やしてしまった。
全く当てにならない情報が氾濫している状態なので、競馬は見るだけに留めるべきなのかも知れない。
しかし、お金を賭けていないレースを見るつまらなさには、私も含めて耐えられない人が多いのも確かだろう。
当てにならない情報に振り回されるのでは無く、もう少し損をしないで競馬予想(競馬予想を楽しむ事)は出来ないものだろうか。
そんな方法を見つけられない限り、私のような貧乏人はとても競馬を続ける事は出来ない。
私のような人が多くなって来ているから、競馬が衰退しているのは確かであろう。
金余りの時代は遠い昔の話であり、2度と巡って来る事は無い事を競馬関係者もそろそろ気づいて欲しいものである。

競馬産業の衰退を食い止めるには控除率の見直し等も含めて大掛かりな改革を必要とするだろうが、これにはJRAの組織の中にシステムに熟知した実行力のある人が現れない限りはとても無理だろうと思う。
満足に馬券も買った事もないであろう人達に、果たしてそんな改革ができるものなのかどうか、かなり不安に思う事ではある。
対策には一刻の猶予も無さそうに思えるのだが、最近は用語の英語化ばかりに執着しているようなので、益々心配になってきている。
応援馬券の発行も私には少しピントが外れていると思うし、暇を持て余している人達が多い組織なのだろうなと傍目からは見えてしまう。
冒頭にも書いた通り、競馬の現状はと言うと崩壊への道をひたすら突き進んでいる。